リーガルチェックとは?
リーガルチェックとは、契約書、利用規約(約款)、合意書、誓約書などの法律文書について、専門家が法的な観点から内容を検証してリスクや問題点をピックアップする作業をいいます。
法令に抵触するおそれがないか、自社(自己)に不利益となる条項が含まれていないか、将来的なトラブルや損害につながるリスクが存在しないかなどを多角的に検討する点に、その大きな特徴があります。
近年では、インターネット上で公開されているひな形やテンプレートを利用して契約書を作成するケースや、生成AIを利用して契約書の草案(ドラフト)を作成するケースが増えています。しかし、これらをそのまま使用した場合、自社の事業内容や取引実態に適合せず、想定外の法的リスクを抱える可能性があります。そのため、契約締結に先立ってリーガルチェックを実施することは、事業者にとって重要なリスクマネジメントの一環といえるでしょう。
また、リーガルチェックは、問題が顕在化した後に対応するためのものではなく、トラブルや損害を未然に防止する「予防法務」の観点から行われるものです。
契約締結前の段階で潜在的な問題点を把握し、必要な修正を加えておくことで、不要なトラブルの発生を回避できる可能性が高まります。
特に、中小企業やフリーランスにとっては、一件の契約トラブルが事業継続や経営基盤に深刻な影響を及ぼすこともあるため、契約内容を慎重に精査することが重要です!
リーガルチェックの目的と確認ポイント
- 法律に違反する内容が含まれていないか確認する
- 実際の取引内容に即した条項となっているか確認する
- 各条項の内容に矛盾・不整合がないか確認する
- 自社(自己)に不利益な条項がないか確認する
契約書を渡されたときの確認ポイントは次のとおりです。
中小受託取引適正化法(旧下請法)や特定商取引法、消費者契約法、フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)などの法令に違反する条項が盛り込まれている場合、その条項が法的効力を失うだけでなく、行政指導や行政処分などの法的リスクを招くおそれがあります。そのため、契約内容が各種法令に適合しているかを慎重に確認することが不可欠です!
また、契約の目的を実現するために必要な条項が漏れなく規定されているか、各条項の内容に矛盾や不整合が生じていないかを検証します。特に、損害賠償の範囲や契約解除事由、秘密保持義務の内容、著作権・知的財産権の帰属など、トラブルにつながりやすい事項については、当事者間の権利義務が明確かつ適切に定められているかを重点的に確認します。
さらには、自社に著しく不利益となる条件が含まれていないかについても精査します。
例えば、報酬の支払条件、支払遅延時の取扱い、損害賠償責任の限定、競業避止義務の内容など、契約実務に大きな影響を及ぼす条項について、その内容が合理的かつ自社にとって過度な負担となっていないかを慎重に検討します。こうした確認を通じて、契約締結後の法的リスクや事業上の不利益を未然に防止することが、リーガルチェックの重要な役割となります。
行政書士による契約書チェック
行政書士は、行政書士法に基づき「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成代理が認められています。
権利の発生、存続、変更、消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類のことを「権利義務に関する書類」といいます。
「権利義務に関する書類」のうち、主なものとして契約書、協議書、示談書、内容証明、定款などがあります。
(業務)
引用元:行政書士法|e-Gov法令検索
第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
契約を締結する際には、契約書を形式的に作成するだけで済ませてしまうケースが少なくありません。しかし、トラブルを防止するという観点からは、そのような対応は望ましいものとはいえません。
契約書を作成するにあたっては、将来的に発生し得るリスクやトラブルの可能性を事前に検討し、①想定されるトラブルに適切に対処できる条項を盛り込むこと、そして②解釈上の疑義が生じないよう明確かつ具体的な表現を用いることが重要です。
一度トラブルが顕在化し、訴訟などの対応が必要となった場合には、多大な時間的・人的コストを要することになります。さらに、その対応に追われることで、本来注力すべき事業活動に悪影響が及ぶおそれもあります。
そのため、契約締結前の段階で「契約書チェック」を実施し、潜在的な法的リスクを洗い出したうえで適切な対策を講じておくことが、将来のトラブルを予防し、事業運営の安定につなげる上で重要であるといえます。
- 契約書に法的なリスクがないかのチェック
- リスクや問題点の指摘
- 具体的な修正案や代替案の提案
- 取引内容のヒアリングに基づく一からの契約書作成
契約書チェックのメリット
契約書は単なる形式的な書類ではなく、当事者間の権利・義務や責任の範囲を定める重要なルールです。しかし、契約書の内容を十分に確認しないまま締結すると、後になって解釈の相違や予期しない損害が発生するおそれがあります。
契約書専門の行政書士は、契約の目的や取引内容を踏まえながら、条項の不備や曖昧な表現がないかを確認し、依頼者のリスクについて検討します。
例えば、報酬の支払条件、契約期間、解除条件、損害賠償責任、秘密保持義務、著作権・知的財産権の帰属、競業避止などの条項について、リスクの有無や改善点を指摘することができます。
また、生成AIで作成した契約書やテンプレートをそのまま使用した場合に生じる問題点を洗い出し、実際の取引に即した内容へ修正することも可能です。これにより、契約当事者双方の認識を明確にし、トラブル発生の可能性を低減することができます。
契約締結後にトラブルへ対応するよりも、事前に契約内容を精査して予防策を講じる方が、時間的・経済的コストを大幅に抑えることができます。
そのため、契約締結前に契約書専門の行政書士によるチェックを受けることは、円滑かつ安全な取引を実現するための有効なリスク管理手段といえるでしょう。
契約書チェックには、取引上のリスクを事前に発見し、将来のトラブルを予防できるという大きなメリットがあります!
契約書チェックをしない場合のデメリット
契約書チェックを経ることなく契約を締結した場合、契約条項が関係法令に抵触している可能性があります。
公序良俗に反する内容や強行法規に違反する内容の契約の場合には無効となるおそれがあるだけでなく、内容によっては刑事責任を問われたり、許認可事業においては行政処分の対象となったりする場合もあります。
したがって、契約内容を検討する際には、自社にとって有利・不利といったことだけでなく、法令違反による刑事罰や行政上の制裁リスクについても十分に考慮することが重要です。
また、事業者同士であれば独占禁止法、対消費者であれば各種消費者保護法といった法令に違反していないかという観点からの注意も必要となります。
中小企業の契約書チェック
中小企業においては、上場企業のような専門の法務部門を設置していないケースが多く、契約書の確認は代表者や担当者などが個別に対応していることが少なくありません。
代表者や担当者が契約実務や法務に関する十分な知識・経験を有している場合には、自社の事業内容や取引実態を深く理解しているという強みを活かし、社内で契約書チェックを実施することにも合理性があります。
しかし、契約書に関する専門的な知識が十分でない場合には、契約上のリスクや不利な条項を見落とすおそれがあり、実効性の高いチェックを行うことは容易ではありません。
そのため、契約書の内容を適切に精査し、法的リスクを低減するためには、契約業務に精通した行政書士といった外部専門家にチェックを依頼することも有効な選択肢といえるでしょう。
行政書士へチェックを依頼する場合の費用相場
作成済みの契約書チェックをしてもらう場合の費用相場は、2万円〜5万円程度となる場合が多いようです。なお、内容がシンプルな覚書や通知書などの場合は1万円程度で対応しているケースもあるようです。
このチェック費用には、「契約書の読み込み」、「法的なリスクや不利益な条項の指摘」、「具体的な修正案」をコメント形式で提示するまでの作業が含まれますが、契約書チェックのみ(読み込みとリスク等の指摘のみ)の対応としているケースもあります。
契約書のページ数(文字数)や条項の数、内容の専門性によって料金は変動しますが、特に、IT業界の業務委託契約書やフランチャイズ契約、著作権・知的財産関連の契約、不動産関連の契約など、専門的な知識を要する契約書の場合は、相場よりも高くなる傾向があります。
また、ネット上のテンプレートをベースとして取引実態に即した内容にするようなケースでは、内容をチェックした上で再構築することになり、実質的には「再作成」となるため、この場合も費用が高くなる傾向があります。
さらに、契約内容が複雑な場合や、複数の契約書が関連する案件、事業譲渡契約などリスクの高い取引については、10万円以上となる場合も珍しくありません。
チェック件数が多い場合や内容によっては20万円以上の費用がかかるケースもありますが、継続的な顧問契約を締結した場合には、月額顧問料に含まれる形で契約書チェックが行われることもあります。
契約書チェックが必要な契約書の例
契約書チェックの対象として取り扱うことが多い書類には、以下のようなものがあります。
契約締結前の段階でリスクを把握し、必要な修正を加えることで、不要なトラブルの発生を回避できる可能性が高まります。
業務委託契約書
業務委託契約とは、企業などの委託者が自社の業務の一部を専門性の高い外部の企業やフリーランスに委託する際に締結する契約のことをいいます。
業務内容の範囲、委託料・支払条件、納期、成果物に関する著作権・知的財産権の帰属、秘密保持、損害賠償など、さまざまな事項について適切に定めておくことが重要です。
2026年1月1日から、「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」として新たに施行されました。
この改正によって法律の名称・用語が変更されるだけでなく、適用対象も従業員基準の追加などで拡大されます。そのため、多くの企業では、既存の契約書や発注書(下請法3条書面)を全て改訂し、取引先と再締結する「契約の巻き直し」作業が必要となります。
フリーランス新法とは、フリーランスの方が安心して働ける環境の整備を図ることを目的として2024年11月1日から施行された新しい法律です。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」といいます。
今後フリーランスの方に業務委託をする場合は、フリーランス新法に則って業務を依頼する必要が出てきます。

秘密保持契約書(NDA)
秘密保持契約書(機密保持契約書)は、企業間の取引上、様々な場面で用いられます。最も一般的なのは、取引に先立ち、その可能性を検討するために相互に情報開示を行う場面です。
秘密保持契約書の確認すべきポイントは、秘密情報の範囲、秘密保持義務の内容、秘密保持義務違反があった場合の制裁、秘密保持義務の存続期間などが挙げられます。
秘密保持契約書はひな形やテンプレートを用いて締結されることも多く、画一的な内容と捉えられがちです。しかし、秘密情報の定義が不明確であったり、当事者の一方に過度な負担を課す内容となっていたりする例も少なくありません。そのため、自社に不利な条項や想定外のリスクが含まれていないかを確認するためにも、専門家によるチェックを受けることが望ましいといえます。
売買契約書
売買契約とは、当事者の一方が財産権を移転する債務を負担し、一方当事者がその代金支払債務を負担することを内容とする契約です。
移転する財産権は、所有権、賃借権、営業権など、制限はありませんが、対価として支払われるものは金銭等に限られています。
動産売買契約書の確認すべきポイントは、目的物の引渡し時の検査や契約不適合責任などが挙げられます。
著作権譲渡契約書・著作権ライセンス契約書
著作権譲渡契約とは、譲渡人から譲受人へ著作権を移転させる際に締結する契約のことをいいます。
著作権譲渡契約書の確認すべきポイントは、著作権の移転、譲渡範囲、著作者人格権、保証などが挙げられます。
著作権ライセンス契約書とは、著作権者が第三者に対して、イラストなどの著作物を利用する権利を許諾する際に締結される契約書です。
著作権ライセンス契約書の確認すべきポイントは、対象著作物の特定、ライセンスの範囲・種類、ライセンス料などが挙げられます。


フランチャイズ契約書
フランチャイズ契約は、フランチャイズ本部が運営するフランチャイズ・システムに加盟店として加入し、店舗を運営する企業のアライアンス形態です。
フランチャイズ契約書の確認すべきポイントは、加盟金、ロイヤルティ、違約金の定め、競業避止義務、中途解約に関する事項などが挙げられます。
加盟店は法律的には本部から独立した事業者であり、本部と加盟店との取引については独占禁止法が適用されます。そのため、個別の契約条項が優越的地位の濫用、抱き合わせ販売等拘束条件付取引または販売価格の制限に該当して独占禁止法違反とならないかについても注意する必要があります。

工事請負契約書・工事請負契約約款
消費者保護の観点から、工事請負契約書については、建設業法19条にて、契約書を作成・交付する義務、双方が署名する義務が課されており、記載しなければならない内容も定められています。(※ 建設業許可が不要な「軽微な建設工事」についても適用されます。)
工事請負契約書・工事請負契約約款の確認すべきポイントは、請負代金及びその支払方法、工期及び引渡し時期、第三者の損害、担保責任、解除権などが挙げられます。
見積書の提示だけで済まされている建設業者も多いようですが、契約書なしで建設工事は違法となります。

金銭消費貸借契約書
金銭消費貸借契約とは、将来返還することを約束したうえで金銭を受け取る契約のことをいいます。
金銭の貸し借りにおいては、「弁済期限」「利息の支払い」などでトラブルが起きやすいです。
金銭消費貸借契約書の確認すべきポイントは、貸付金の交付、弁済期限、利息、連帯保証などが挙げられます。
不動産売買契約書・賃貸借契約書
不動産売買契約とは、売主がある不動産の所有権(または借地権など)を買主に移転することを約束し、買主がこれに対してその代金を支払うことを約束することにより成立する契約です。
賃貸借契約とは、貸主が物の使用や収益を借主にさせることを約束し、その代わりに借主が貸主に賃料を支払うことを約束することによって効力が生じる契約をいいます。
建物賃貸借契約書の確認すべきポイントは、使用目的、修繕費の負担、造作買取請求権、明渡し及び原状回復などが挙げられます。

雇用契約書・労働条件通知書
雇用契約書は、使用者と労働者とにより締結した契約であるのに対し、労働条件通知書は、使用者による一方的通知です。
労働条件通知書は、使用者が労働者に対して一方的に労働条件を通知するものであり、労働基準法第15条により正社員・契約社員・パート・アルバイトを問わず作成・交付が義務付けられています。
労働条件通知書の内容が労働基準法に違反していたり、労働者に対して未交付の場合には罰金が科せられます。(労基法120条1号)
「労働条件通知書」兼「雇用契約書」という形式で、通知と契約書を兼ねる契約書を作成する場合もあります。
事業譲渡契約書
事業譲渡契約とは、譲渡会社の事業の全部または一部を、譲受会社や個人に譲渡する際に締結する契約のことをいいます。
事業譲渡とは、譲渡会社の事業の全部または一部を譲受会社や個人に譲渡するというものですが、譲渡会社が保有する資産(知的財産権・ノウハウ等を含む)、負債、契約や従業員を個別に譲受会社や個人に譲渡・承継させるものです。
事業譲渡は、合併や会社分割といった法人格の包括的な承継を伴わないため、譲渡対象となる事業、財産や契約関係などを確定し、譲渡対象目録に明記することが必要となります。
利用規約・プライバシーポリシー
2020年4月1日に施工された民法改正によって、「定型約款」に関するルールが定められました。「約款」は契約であり、契約一般の法理に服することが明確にされています。
Webサイト上の利用規約も「定型約款」に該当します。
不特定多数のユーザーを対象としてサービス提供する場合、ユーザーごとに個別の契約交渉を行って契約内容を定めるというのは現実的ではありません。
利用規約を作成することで、不特定多数のユーザーに対して、同じルールを適用することが可能となります。
プライバシーポリシーは、実務上、個人情報保護法又はその関連法令の遵守のための手段として用いられています。法令上必ずしも義務づけられていない事項についても、ユーザーにとって自己に関する情報がどのように取り扱われているかを把握できるようにして、透明性の確保を図る観点から、プライバシーポリシーを策定することもあります。
消費者契約法、個人情報保護法、特定商取引法など、複数の法令に準拠した内容となっている必要があるため、法改正への対応も含めて定期的な見直しが必要となります。

まとめ
ビジネスのトラブルを未然に防ぐ上で、契約書のチェックは欠かせないプロセスです。トラブルが起きる前の予防法務であれば、行政書士への依頼が合理的と考えられます。
行政書士を活用する主なメリットは、コストパフォーマンスに優れる点、契約書のドラフト作成から修正までワンストップで任せられる点、そして実務に即した柔軟なアドバイスが得られる点です。
「生成AIで作成したけど自分だけで判断するのは不安」という場合は、まずは気軽に行政書士へご相談ください。
契約後の変更や修正は困難なため、事前に入念なチェックを行うことがリスク回避の鉄則です。
重要な契約を締結する際には、一度立ち止まって専門家の視点を取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
行政書士契約書チェック・修正なら、年間200件超の契約書作成実績がある当事務所にぜひお任せください。
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