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イラスト制作業務委託契約書の作成ポイントと注意事項を解説!

イラスト制作業務委託契約書
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前回の記事「著作物利用許諾契約書の基本構成と注意すべきポイントを解説!」では、著作物利用許諾契約書の基本構成と注意すべきポイントを解説しましたが、今回は、イラスト制作に関する契約書について注目してみました。

クリエイターの方がクライアントのためにイラストを制作するときにどれくらい事前に契約書を交わしているでしょうか?

契約条件をきちんと話し合わず、また、契約書を交わさずにイラストを納品し、後日、イラストの著作権がクライアントとクリエイターのどちらにあるのか争いになったり、イラストの利用許諾について争いになったりするのは典型的な紛争パターンです。

行政書士

契約でトラブルを回避することができます!自分の身を守るためにも契約書を交わす癖をつけましょう!

目次

イラスト制作業務委託契約書とは?

近年では、企業のWebサイトやSNS、パンフレットをはじめ、個人が運営するブログやYouTubeチャンネルなど、多様な媒体においてオリジナルイラストのニーズが一層高まっています。それに伴い、イラストレーターやデザイナーへ制作業務を委託する事例も増加傾向にあります。

しかしながら、口頭での合意や簡易なメールのやり取りのみで業務を開始してしまうと、次のようなトラブルが生じやすくなります。

契約書を交わしていない場合のトラブル例
  • 完成品が想定していたイメージと異なる
  • 納品後に連絡が途絶える
  • 報酬が支払われない
  • 成果物が別の用途に無断で使用される

こうしたトラブルを未然に防止し、クライアント(発注者)とクリエイター(受注者)の双方が安心して取引を遂行するために重要となるのが「契約書」の存在です。

イラスト制作業務委託契約書は、クライアントとクリエイターとの間で、制作業務の内容、報酬条件、権利帰属、責任範囲などを明確化し、当事者間の共通認識を形成するとともに、信頼関係を支える基盤として機能します。

単なる「制作依頼の確認書」ではなく、後日のトラブル(報酬未払い、無断利用、修正要求の無制限化等)を防ぐための防波堤という性格を持ちます。

この契約において重要なポイントは、契約対象となる「イラスト業務の特定」や「成果物に関する権利の帰属」などです。

契約書を交わさない場合やその不備によって重要ポイントが明確でない場合には、次のようなリスクが生じるおそれがあります。

・希望していたクオリティのイラスト提供が受けられない
・クライアントから想定以上の業務を要求される
・変更や追加を求められた場合に、当初作業とは別の変更や追加作業の範囲及びその対価を巡るトラブル
・イラストにかかる著作権の帰属、イラストの利用範囲及びその対価を巡るトラブル

イラストの制作を外部の制作会社やクリエイター等に委託した場合、制作されたイラストの著作権については、契約書などの書面において著作権の帰属に関する合意がなされていない限り、そのイラストを実際に制作した外部の制作会社やクリエイター等に帰属したままとなります。したがって、この点を踏まえると、契約書を適切に締結しておくことが望ましいといえます。

業務委託契約の基本的性質

イラスト制作業務委託契約は、業務委託契約の一種と考えられますが、「業務委託」は、法律に基づく用語ではなく、その法的性質は、民法上の「請負」か「準委任」のいずれか、又は、これらの混在したものとなります。

請負は、請負人が仕事の「完成」を約束し、注文者がその仕事の「結果」に対して報酬を支払うことを約束する契約です。これに対して、準委任契約は、委託者が一定の事務を行うことを受託者に委託し、受託者がこれを承諾する契約です。

どちらも他人の役務提供を受けることを内容とする契約という点では共通しています。しかし、請負が一定の成果を出すことを約束するものであるのに対して、準委任は、善良な管理者の注意義務をもって事務を処理することを本来の義務とするものであり、請負と準委任は、一定の成果を出すことの約束までは不要とする点において異なります。

イラスト制作業務委託契約の場合、成果物であるイラストについてのクライアント側の要求する仕様が契約上相当程度特定されていれば請負的性質が強くなるといえるでしょう。

契約書作成の際には、後日、業務委託契約の法的性質が絡んだトラブルを防ぐために、問題となる各場面における要件・効果を十分に記載することが重要です。

イラスト制作業務委託契約書の作成ポイント

イラスト制作業務の内容の特定

第●条(委託業務)
甲は、乙に対し、甲の●●●のイラスト制作に関し、以下の業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
(1)委託業務:●●●のイラスト制作
(2)成果物:●●●
(3)成果物の用途:
(4)成果物の仕様:

本条項は、委託業務の内容を特定するものです。委託業務の内容が十分に特定されていない場合、成果物が仕様に合致しているか否かについての当事者双方の理解の食い違いが原因となり、協議による解決が難しい事態となる場合があります。

このような事態を避けるためには、クライアント側の希望とクリエイター側において対応可能な作業内容などを事前に十分すり合わせた上で、可能な範囲で具体的かつ明確に契約書に記載することが望ましいといえます。

成果物の仕様について、その詳細を「仕様書」という形で別途書面を作成することも考えられます。この場合、次の内容に修正することが考えられます。

本件業務により制作されるイラストの仕様は、別途甲乙の協議により作成する仕様書のとおりとする。

イラスト制作業務委託契約では、クリエイター側に個性を発揮することが期待されるため、仕様の特定が抽象的なものとなる場合もあるでしょう。この場合であっても、仕様書には、当時者双方で共有された次の点についてできる限り詳細に記載しておきましょう。

①イラスト制作の目的
②成果物の用途
➂イラストのコンセプト  

仕様の特定が抽象的となる場合の対策

対策① ラフ案によって方向性を決定する

クリエイターが本格的なイラスト制作業務に入る前に、クリエイターが何点かのラフ案を提示してクライアントの確認をとってから本格作業に入るといった方法をとることを前提とした条項とする。

乙は、前項に定める仕様書確定後●日以内に、イラストのラフ案●点を甲に提出する。

対策② 複数のイラストを制作・納品させて選択する

クリエイターに契約上の仕様に従ったイラストを複数制作・納品させて、クライアントがその中から採用するイラストを選択する方法をとることを前提とした条項とする。

乙は、本件業務として、前項所定の仕様に従ったイラストを●点制作し、納期の●日前までに甲に同イラスト●点を提出する。

「対策①」又は「対策②」の方法をとった場合、ラフ案などの中間生成物や不採用のイラストが生じることになりますので、これらの権利帰属についても明確に定めておくことは必須といえます。

クリエイターとしては、クライアントの要望が拡大することを防止するために、提出するイラストの点数・修正回数などを制限する対策も必要になるでしょう。

報酬・支払条件

第●条(委託料)
1 本件業務の委託料は、金●●万円(消費税を含む。)とする。
2 甲は、乙に対し、前項に定める委託料を、第●条の検収完了後●日以内に、下記銀行口座に振り込んで支払う。

本条項は、委託料の額やその支払条件などを定めるものです。なお、取引規模が小さい場合などでは、一括払いや分割払いを採用することが多いようです。

2026年1月1日から、「下請法」が改正され、「中小受託取引適正化法(通称: 取適法 とりてきほう )」として新たに施行されます。

取適法(改正下請法)の適用がある場合には、委託事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、代金の支払期日を定めなくてはなりません。

(製造委託等代金の支払期日)
第三条 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
2 製造委託等代金の支払期日が定められなかつたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して製造委託等代金の支払期日が定められたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が、それぞれ製造委託等代金の支払期日と定められたものとみなす。

引用元:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律|e-Gov法令検索

「取適法」と「フリーランス・事業者間取引適正化等法」のいずれにも違反する行為については、原則としてフリーランス・事業者間取引適正化等法を優先して適用することとされています。

著作権の帰属

第●条(著作権の帰属)
本件成果物の著作権(著作権法第27条及び第28条に基づく権利を含む。)は、第●条の委託料が支払われた日をもって、乙から甲に移転する。

著作権及び著作者人格権を原始的に取得するのは、著作物を創作したクリエイターです。(※職務著作の例外があります。)

著作権の譲渡に関する規定について、27条に規定する権利(翻案権)及び28条に規定する権利(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)も含めて譲渡をするのであれば、その旨を明記する必要があります。

著作権をクライアントに帰属させ、かつ、クリエイターが著作者人格権も行使しないこととした場合、原則として、クライアントは成果物を他の用途で利用することや改変を自由に行えることになります。しかし、この場合であっても、成果物を他の用途で利用することについて、契約でクリエイターの承諾を得ることを条件とすることもできます。

著作権譲渡契約については、以下の記事をご覧ください。

著作者人格権について

著作者人格権は、一身専属性を有し、譲渡することができません。著作財産権を譲渡した後も、クリエイターは、著作者人格権を有し、これを行使することができます。そのため、必要に応じて、著作者人格権の全部又は一部について不行使特約を置くことになります。

第●条(著作者人格権)
乙は、本件成果物についての著作者人格権を行使しない。

なお、成果物の内容に変更を加えられたくない場合には、クリエイターの著作者人格権について、その不行使をあらかじめ同意しない記載とすることも可能です。

著作権を譲渡しない場合はライセンス

クリエイターが成果物の著作権をクライアントに譲渡しない場合には、クライアントの成果物の利用について、次のような利用許諾(ライセンス)条項を設ける必要があります。

第●条(利用許諾)
乙は、以下の条件により、甲に対し、本件成果物の非独占的な利用を許諾する。 
①利用方法:●●●
②利用期間:●●●

クリエイターに著作権が帰属する場合において、クリエイターが第三者に対して、イラストなどの著作物を利用する権利を許諾する際に締結されるのが著作物利用許諾契約(著作権ライセンス契約)です。この場合、クリエイターに著作権が留保された状態での利用許諾となります。詳細については、以下の記事をご覧ください。

保証条項

クリエイターが創作したイラストが、第三者の著作権の権利を侵害して創作されたものである場合、クライアントによるイラストの利用も当該第三者の権利を侵害することとなる可能性が高く、その場合、第三者から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

ですから、クライアントとしては、クリエイターが納品したイラストの利用によって第三者から何らかの請求を受けることがないようにしておく必要があり、保証条項は、そのための1つの手段となります。

第●条(保証)
乙は、本件成果物の全ての著作権が乙に帰属するものであり、第三者の著作権を侵害しないものであることを保証する。

ポートフォリオ条項

イラストのポートフォリオ公開には、次のような多面的なメリットがあります。

・受注機会の増加
・単価交渉力の向上
・継続案件の獲得
・市場ポジションの確立

クリエイターが、有名な企業からイラスト制作の依頼を受け、無事に納品まで完了した場合、それは大きな成果であり、制作実績として紹介したくなるのは自然なことです。

もっとも、イラストの著作権をクライアントへ譲渡してしまった場合、原則としてクリエイターは、その後クライアントの承諾なく当該イラストをポートフォリオとして公開することができなくなってしまいます。

そのため、将来的に実績として公開することを想定しているのであれば、契約書に「実績公開の可否」と「その範囲」を明確に定めておくことが重要となります。

・実績として自身のWebサイトやSNSで公開すること
・営業資料として使用すること

契約当事者の守秘義務を規定するものが秘密保持条項ですが、この秘密保持条項において次のような記載がある場合には、ポートフォリオ条項において実績公開が可能となる場合であっても、公開時期については注意する必要があります。また、秘密保持条項の内容によっては、ポートフォリオ条項との整合性についても確認する必要があります。

本件成果物について、本件成果物が甲により公表されるまで秘密情報とする。

まとめ

今回は、クリエイターの皆様に向けてイラスト制作業務委託契約書の作成ポイントと注意事項について解説しました。

本記事で取り上げたポイントは、いずれも実務上きわめて重要な内容ですので、必ず押さえておきましょう。

作成ポイントのまとめ
  • イラスト制作業務の内容の特定
  • 仕様の特定が抽象的となる場合の対策
  • 報酬・支払条件
  • 著作権の帰属
  • 著作者人格権について
  • 著作権を譲渡しない場合はライセンス
  • 保証条項
  • ポートフォリオ条項
行政書士

イラスト制作業務委託契約書の作成は、著作権相談員であり契約書専門の当事務所にぜひご相談・ご依頼ください。

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