前回の記事「著作権譲渡契約書でチェックすべきポイントを解説!」では、著作権や著作権譲渡契約書のチェックポイントについて解説しましたが、今回は、創作した著作物の利用に関する契約書にスポットを当ててみました。
YouTubeの動画やSNSの投稿、イラストや音楽など、さまざまな形でクリエイティブな活動をしている人が増えていますが、自分が創作した作品を第三者に利用させる場合は、どのようなルールで利用してもらうのかを事前に決めておかなければ、後にトラブルになることがあります。
例えば、自分の意図しない形で作品が悪用されてしまうことも考えられます。このようなリスクを防ぐために必要となるのが「著作物利用許諾契約書」です。

どんなことを決めたらいいんだろう…
この記事では、著作物利用許諾契約書がなぜ重要なのか、その基本構成と注意すべきポイントについて分かりやすく解説します。
著作物利用許諾契約書とは?
著作物を対象とする契約には、様々な類型・内容のものがありますが、既に存在する著作物の利用を希望する場合では、「著作権譲渡契約」又は「著作物利用許諾契約(著作権ライセンス契約)」を締結することが必要になります。
著作物利用許諾契約書とは、著作権者が第三者に対して、イラストやキャラクターなどの著作物を利用する権利を許諾する際に締結される契約書です。
(著作物の利用の許諾)
引用元:著作権法|e-Gov法令検索
第六十三条 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる。
| 著作物利用許諾契約の当事者 | |
| ライセンサー:権利を許諾する者 | ライセンシー:権利の許諾を受ける者 |
著作物利用許諾契約では、対象となる著作物の特定、ライセンスの範囲・種類、利用料(ライセンス料)や有効期間などについて定めることになります。この契約により、著作権者の権利が保護され、ライセンシーも安心して著作物を利用できる環境が整います。
著作物利用許諾契約の必要性
著作物の利用許諾が必要な場合は、主に次のような状況です。
・著作物を改変する場合
・他者の著作物を商業目的で利用する場合
・著作物を再配布する場合
・著作物を公開する場合
これらの状況では、著作権者の許諾を得る必要があります。なお、無断で利用すると著作権侵害となり、法的な問題が発生する可能性があります!
著作権譲渡と著作物利用許諾の違い
著作権譲渡
著作権譲渡では、譲渡により譲受人が新たな著作権者となります。
譲受人は自ら著作物を利用することができるだけでなく、他人に著作権を譲渡することもできますし、利用許諾をすることも可能です。
また、侵害者に対しては差止請求等の権利行使をすることもできます。
著作権の譲渡では、譲受人に著作権が移転するため、譲受人以外の第三者に作品を利用させることができなくなります。
著作権譲渡契約については、以下の記事をご覧ください。


著作物利用許諾
著作物の利用許諾では、著作権者に著作権が留保された状態での利用許諾となります。
ライセンシーは、 利用許諾の範囲内で自らその著作物を利用することはできますが、他人に対して著作権を譲渡することや、再利用許諾をすることはできません。
また、著作権侵害者に対して、原則として自ら権利行使をすることはできません。
利用許諾を非独占的とすることにより、ライセンシー以外の第三者に対して、ライセンシーと同様の内容の利用許諾を行うことができます。
クリエイターにとっては、著作物利用許諾契約のほうが自由度が高いといえます。
著作物利用許諾契約書の基本構成
著作物利用許諾契約書の基本構成は、以下のような条項で構成されるのが一般的です。著作権契約書といっても様々なタイプがありますが、標準的な「著作物の利用許諾」を目的とした契約書では、以下が基本になります。
- 対象著作物の特定
- ライセンスの範囲・種類
- ライセンス料
- 著作権表示
- 保 証
- 第三者の権利侵害
- 契約終了後の措置
- 契約期間
- 契約解除
著作物利用許諾契約書の注意すべきポイント
対象著作物の特定
利用を許諾する著作物は、著作物の名称・題号や著作物の種類・内容で明確に特定しておきましょう!
また、著作物の「部分」が契約対象である場合には、どの部分であるかを明確に特定すべきです。
第○条(利用許諾)
●●(以下「甲」という。)は、■■(以下「乙」という。)に対し、甲が有する下記の著作物(以下「本件著作物」という。)の利用を許諾する。
記
① 名 称
② 内 容
ライセンスの範囲・種類
対象著作物のライセンス(利用許諾)に係る利用方法や条件を明確に定めましょう。
第○条(本件著作物の利用許諾)
甲は、下記及び本契約所定の条件により、乙に対し、本件著作物の非独占的な利用を許諾する。
記
① 利用媒体
② 利用方法
この条項例では、「非独占的」利用許諾が定められています。そのため、ライセンサーはライセンシー以外の第三者に対して、ライセンシーと同様の内容の利用許諾を行うことができます。
ライセンシーの立場としては、このような規定は望ましいとはいえません。
しかし、独占的な利用許諾を受けるためには、非独占的利用許諾を受けるよりも高額なライセンス料を支払う必要があります。そのため、独占的利用許諾を受けるだけの費用対効果についてライセンシーはビジネス的な判断をして、許諾内容を検討することになります。
ライセンス料
ライセンス料の決め方については、大別すると、次のとおりとなります。支払時期や支払方法などについても明確に定めておきましょう。
- ランニング・ロイヤリティ方式
- 定額方式
- ①と②の併用型
ある一定の固定金額を毎月支払うといった定め方をする場合には、次のようになります。
第○条(利用料)
乙は、甲に対し、本件許諾の対価として、月額金●万円(消費税込)を支払うものとする。
著作権のライセンスは、性質上、ライセンシーにおける収益活動のために行われるものですから、その活動によって得た収益に連動する形でライセンス料を定めることとすれば、より実態に即したものとなるでしょう。
著作権表示
第○条(著作権表示)
乙は、本件著作物を●●に利用する場合には、甲が別途指定する位置に、次の著作権表示をするものとする。
© (20XX)●●
©表示は、著作権の所在を明示する記号です。「C」は「Copyright」の頭文字に由来します。
ちなみに、日本では©表示の法的な意義は存在しません。なお、万国著作権条約の加盟国においては、一定の保護を受けられる場合があります。
ベルヌ条約は著作権を国際的に保護する条約で、創作と同時に著作権が創作者に発生・帰属して行使可能となる無方式主義を原則としています。日本もこの条約に加盟しています。
万国著作権条約は、日本のような無方式主義国と、著作権の享有及び行使の条件として官庁への登録等の一定の方式を履行することを要求する方式主義国を結ぶ懸け橋となる条約です。
ベルヌ条約と万国著作権条約の両方の条約を締結する国の間では万国著作権条約は適用されず、ベルヌ条約が適用されます。
保 証
ライセンシーは、ライセンサーから許諾を受ける著作物の利用によって第三者から請求を受けることがないようにしておく必要があり、保証条項は、そのための1つの手段となります。
第○条(保証)
甲は、本件著作物が、第三者の著作権を侵害しないものであることを保証する。
第三者の権利侵害
第三者による著作権等の侵害については、ライセンサーとライセンシーの利害が一致しますので、次の条項例ではライセンサーとライセンシーが共同してこの侵害に対処することとしています。
第○条(第三者の権利侵害)
甲及び乙は、共同して本件著作物に対する第三者による著作権等の侵害防止に努めるものとする。
また、どのような対応が必要になるのかについては、具体的な侵害行為が発生してからでないと判断することが難しいため、条項例では努力義務規定に留めています。
契約終了後の措置
ライセンス契約が終了した場合に、ライセンシーにおいて、対象著作物を消去、廃棄又は返却しなければならないことを定める場合には、次のとおりとなります。
第○条(契約終了時の義務)
乙は、本契約が終了した場合、直ちに、甲の指示により、終了時において乙の保有する本件著作物を消去し、廃棄し、又は甲に返還するものとする。
ライセンス契約においては、ライセンシーが、ライセンス契約時点において残存する複製物につき新たな支分権侵害を構成しない範囲では引き続き利用を継続することが予定されている場合や、契約終了時に残存する対象著作物の複製物を含む在庫の譲渡等、契約終了後も一定期間は新たな支分権侵害を構成する態様での利用をも継続したいという場合もあります。
このような場合にも、個々の事情に即して実現したい契約終了後の内容を契約上明確に定めておくことが重要となります!
まとめ
- 対象著作物の特定
- ライセンスの範囲・種類を明確に規定
- 契約の実態に即したライセンス料
- 保証条項の内容
- 第三者の権利侵害の場合の対処
- 契約終了後の著作物等の取扱い



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